弓具について(参考:作成中テキストより)*2003.5.23未完容赦
弓具について(参考:作成中テキストより)*2003.5.23未完容赦
弓具について
『弓具の雑学事典』(共著、2010年)をスキージャーナル社より出版しました。
おもしろい雑学、裏技も満載です。
書店・弓道具店でお求め下さい。
●A5
●288ページ
●2,100円(税込)
●ISBN 978-4-7899-2130-5
●2010.07.23 発行
概要:
日本武道学会・弓道専門分科会に所属する弓道研究者であり、弓道愛好家でもある5人
の著者が、歴史から管理、修理法、取り扱いのマナー、おもしろ&お役立ち雑学まで、
知って得する弓具にまつわる119の知識を豊富な写真と図版でわかりやすく解説。
すべての弓道人に贈る雑学辞典の決定版。
編者:
日本武道学会・弓道専門分科会
著者:
森俊男・佐藤明・黒須憲・松尾牧則・山田奨治
内容・目次:
第1章◎歴史
独自の文化を背景に発展した弓具、その歴史をひもとく
日本最古の弓具とは?
丸木弓ってどんな弓?
狩猟から武器へ――弓矢の変遷
縄文・弥生・古墳時代の弓具
奈良・平安時代の弓具
鎌倉〜戦国時代の弓具
江戸時代の弓具
近代の弓具はどう進化した?
梓弓ってどんな弓?
征矢ってどんな矢?
鏑矢と蟇目
鳴弦とは?
破魔弓・破魔矢の意味って?
五人張りの弓ってなに?
侍はなぜ箙に1本だけ矢を残すのか?
通し矢競技の隆盛による用具の変化
目的に応じた筈の形
目的に応じた鏃の形
目的に応じた弓の種類
目的に応じた弦の種類
目的に応じた中仕掛けの工夫
目的に応じた?の種類
戦いではなぜ柔帽子の?を使ったか?
近的で使用するのは、なぜ尺二寸的?
世界の弓の歴史
第2章◎管理と修理
弓具の持つ力を十二分に発揮させるための手入れ法
【矢】
自分でできる矢の管理方法
箆(シャフト)の切り方
筈の交換方法
抜けない矢筈を抜く裏技
筈こぼれを防ぐ裏技
筈溝の角度で矢の着点を調整する裏技
羽根のすり減りを防ぐ裏技
板付(矢尻)の交換方法
板付の形状に隠された理由!?
板付(矢尻)を外す裏技
矢の重さと重心を確認する方法
矢の重心を変更する方法
矢の曲がりを確認する方法
曲がりの矯正方法
矧ぎ糸の巻きかえ方
的中を左右する矢の不具合
【?】
?の手入れと管理方法
?の取り扱い注意点
?を湿気から守るには?
?革の癖をとる裏技
?の汚れはどう落とす?
自分でできる?の弦道の修理法
?のすり切れやはがれの修理法
?の溝の深さを中仕掛けで調整する裏技
的中を左右する?の不具合
【弓】
毎日行ないたい弓の手入れ
正しい弓の張り方
弓の張り方で形を管理する方法(竹弓の場合)
弓の形状のチェックポイント
自分でできる弓の手入れと修理法
握り皮の巻きかえ方
籐の巻きかえ方
中仕掛けのつくり方
弦輪のつくり方
出木弓を入木弓にする弦の裏技
手になじむ握りをつくる工夫
弓の握りを細くする裏技
弓手が弱い人のための握り皮の裏技
弓力を強くする裏技
的中を左右する弓の不具合
第3章◎取り扱いのマナー
新しい弓具の選び方から保管・運搬時の注意点まで
破損を防ぐための弓の扱い方
弓を保管する際の注意点
弓の強さを上げる時期の見極め方は?
新しい竹弓の扱い方
新しい矢の選び方
新しい矢の扱い方
新しい?の扱い方
知っておきたいルールとマナー
弓の梱包と運搬方法
第4章◎雑学
おもしろくてためになる雑学知識の傑作選
【矢】
矢羽根にはどんな種類がある?
矢羽根はなぜ3枚?
羽根がなかったらどうなるの?
甲矢と乙矢は回転が逆?
甲矢と乙矢、どっちが中る?
羽根がのびる?
ジュラルミン、カーボン、竹、どの矢が中る?
ジュラルミン矢、カーボン矢の番号はどういう意味?
軽い矢は矢飛びが速く、貫徹力が増すのか?
矢が飛ぶ速度は、時速何キロ?
矢のスピードを測る裏技
矢は最長どれくらい飛ばせる?
巻藁矢は、的矢とどうちがう?
番える位置を変えると、矢の着点はどうなる?
「石打ちの矢」ってなに?
頭か尻か?
【弓】
弓の長さに規定はあるの?
日本の弓のように長いことによる利点とは?
弓巴の高さはなせ15センチ?
弓力はどうやって測る?
籐はなぜ3カ所か5カ所に巻いてあるの?
矢摺籐にマークをつけたら正確にねらえるのでは?
グラス弓とカーボン弓、どっちがいい?
「振動の節」ってなに?
関板は弦音を出すためにあるの?
弓はどんな木でつくられてきた?
アイヌの弓はどんなもの?
隠し銘ってどんなもの?
世界にはどんな弓がある?
【弦】
弦はどんな繊維でできている?
弦の太さや重さで矢飛びは変わる?
麻ぐすねのつくり方
【的・ぎり粉・筆粉】
的にはどんな種類がある?
ぎり粉は何からできている?
筆粉は灰なの?
冬にも滑らない冬用筆粉の裏技
【語源・言葉・俗信】
「かけがえのない」は?が語源?
「手ぐすねをひく」の語源は?
「手の内を明かす」は弓道が語源?
「矢継ぎ早に」の語源は?
「はずが合わぬ」の語源は?
「弓を外す」の語源は?
「弓をうつ」って正しい言い方?
「弦があがる」の語源は?
あがり弦が安産のお守りになる?
以下参考:作成中テキストより *2005.11.1未完容赦
藤放しができるまで
真竹2〜5年物を使用。
切る時期は一霜降りた頃。(夏に切ると虫が入る)
弓の節の合う竹を切る。
太さ握りこぶし大の真竹を切る。
切り出した竹を4つに割る。
目通りの竹2枚を確保し、脇竹は使用しない。
真っ直ぐな竹のみを確保し、内節を落とす。
4〜6ヵ月天日で自然乾燥させる。(内身の方を先に干し皮の方を後に干す)
南面した部分を日表、北面した部分を日裏と称する。
日表を外竹、日裏を内竹に使用することが望ましい。
大量生産の現在の製法では日表・日裏は区別されていない。
2、油抜き・乾燥
炭火であぶり、油分を拭き取り、油抜きをする。
油抜きによりつやのあるきれいな竹表面になる。
内竹は燻し、煤を水洗いし、飴色になるまで1〜2年繰り返し、煤竹とする。
3、火入れ
外竹は内側のみ火入れし、焦がし、真っ直ぐに調整する。
内竹と中芯材は両面を火入れし、焦がし、調整して、竹を堅くする。
内竹に煤竹を使用するのも、内竹は硬質である方が良いためである。
4、前竹、外竹作り(削り)
握り部を中心として弓の両端に行くに従い薄くなるように削る。
5、ひご削り(中芯)
ひごは縦にいれることにより弾力が増す。
ひごの最も厚い部分は握り部から目付にかけてで、そこを中心に上下少しずつ細く削る。
弓の分の厚さはひごによって調節される。
6、中芯・側木張り合わせ
ひごは1年位乾燥させたものを使用する。
中芯となるひご数枚と側木(櫨など)2枚を接着剤で張り合わせる。
3cm間隔位に藤を巻き、くさびを打って締め付け、弓芯を作る。
7、弓芯削り
接着された弓芯は2枚に切り、鉋で削って仕上げる。
下端から85cmの所が最も太くなっており、これが握り部となる。
8、関板削り
上下の関板となる木を削る。上部のものは額木ともいう。
9、打ち込み(くさび打ち)
にべ又は合成樹脂接着剤で、弓芯を外竹・内竹で挟み接着する。
上下の関板も接着する。
傷を防ぐため竹を薄く削った「当竹」をあて、3cm間隔位で籐を巻く。
1尺6〜8寸(48cm〜54cm)の裏反りをつけながら、80〜120本の竹くさびを打ち込む。にべ弓は裏反り多め。合成接着剤の弓は裏反り少なめ。カーボン内蔵の弓は更に裏反り少なめ。
バナナ魚のグラム上の青色の赤ちゃんのほくろ最良の弓は1尺8寸、最小の場合は1尺6寸の反りをかけるのが昔からのくさび打ちの定寸とされている。これはにべ弓を想定したものである。
下の方から上へと反りをつけてゆく。
くさびは竹の節にあわせて調節して打つ。
蒸し打ち、炙り打ちなどがある。(火入れ)
約50度から60度でくさびを打つ。合成接着剤を使用する場合には必要ない。
10、型入れ
弓の形を調える。職人の感覚が勝負。
11、乾燥
乾燥機に入れ、くさびをつけたまま1〜3日乾燥させる。
(昔は天日にて乾かした。)
くさび、藤をはずして(藤放し)、また乾燥させる。
藤放しは最低2、3ヶ月、できれば1年以上置き、形を定着させる。
12、張り込み(荒張り)
弭を切り、張り台(反り台)に下弭からかけ張り込み、1週間〜10日置く。
張り台に置けない場合には、張り台よりはずし弦を掛けたまま置く。
裏反りが30〜40cm程度まで抜けるのを目安にする。
13、削り仕上げ
最初に内竹の角を削って面取りを行う。
鉋、小刀などで削る。
詳細は別途記載(村について、他)を参照。
14、装束仕上げ
籐、握り皮を巻き、仕上げる。銘を入れ製品となる。
1張の弓ができるまで、約2年間かかることとなる。
弓師とは、弓を作る職人のことで、弓を作ることを「打つ」という。
弓師には弓を打つだけの人と、弓を打ち村仕上げまでする人とがある。
村師とは弓の「削り」を担当する職人である。
★豆知識:
・竹弓で、切詰めの所に竹ひごを挟むのを「かんざし」という。それで仕上がりが良ければ使用には特に問題はないが、少々ごまかして製作されたものということになる。
7−2−6 藤放し弓製作実習の手引き
1.新弓の張り方・・・新弓は握りから矢摺節あたりへ手をかけて押し張る。通常の張り方と違い、新弓は握り下を持って張るのではないことに注意。
2.切り詰めを結って張ること・・・ひっくり返るのを防止するために結う。
3.新弓を一人で張らないこと・・・弱弓であっても一人で張らず、上を支えてもらって張る。荒張の弦は太い方がよい。
4.弓張取りの際の注意・・・弦をかけた後、右手で握りの下を保持し、左手は握りより上へ持ち直す。弓はの高さを確認し、出入りをうかがう。次に上下の成を確認し、強いところを押し、弓形を整える。
5.外竹から出入りを確認・・・外竹から出入りを見て、弓の中央部で出入りを直す。上部だけの矯正ではなかなか直らない。
6.素引きについて・・・新弓の素引きには注意を要する。張りにくい新弓は素引きをしない。素引きは弓のために良くない。弓のすわりをみて、すわり良ければ2日張り置いて1、2度素引きも可。狂う弓はよく矯めてから上を縛っておいたり、矯正器をかけて張り置く。3、4日張り置いて状態がよければ素引きも可。
7.削り方について・・・握りより上へ削り、それから本を削る。
メモ:
弓の出入りを考え弭を切る。
上の弦輪を上下入れ替えて、弦の出入りが矯正される場合もある。
良い張り顔に仕上がれば、適宜各所の弦までの寸法を計測し、記録にとどめたり、成りの絵を紙に写し取って保管するのも良い方法である。
強き所を弱めることにより弱き所を助ける。
弓は張り出したときに成りをすえることが肝要である。
射手村の銘は握下・手下握りの内・外竹額木の後などに小刀先にて彫り入れる。
7−2−7 村について
「むらをとる」という意味から、弓を削ることを「村」と称される。ここでは、「藤放し」から弓に仕上げるまでの方法について解説する。
・荒村・・・藤放し弓を最少1年以上枯らしてからの製作するのが望ましい。
大量生産の現在では1年も枯らさずに出荷される場合もあるだろう。
張り台(台張)にかけ、弓形をつけ、弦を張ってしばらく置く。
「面取り」という、内竹の角をとる作業を小刀、きそげ等で行う。
内竹の面取りを終え、外竹の角をとる(この場合は弦を外してから行う)。
外竹は一文字に削り、内竹は内を寄せて削る
再び、弦をかけて数日間張り込んだままにする。
張り込み、弓形が安定してから鉋をかける。
弭の形をきちんと整える。
・中村・・・荒村の弓に籐を巻き、仮装束をして300〜500本程度の矢数をかける。
弓の癖や狂いを見て、小刀、きそげ等で修正のため削る。
・小村・・・中村の弓を、2〜3千本以上の矢数(あるいは1年くらい)をかける。
弓の癖や狂いを見て、更に小刀等で修正のため削る。
・仕上村・・小村を施した後、更に数を射込む。
射手自身の好みの弓形に仕上げるために行うもので、弓村師が行う。
・射手村・・仕上村を弓村師に委ねず、射手自身が行う村の方法をいう。
知識と経験が必要。
1.村の道具
小刀
分指し(ぶさし)
猿手(さるて)
ヤスリ・・・粗目、中目など必要。
紙ヤスリ・・・粗目、仕上用など2種類以上あった方がよい。
砥石(大村、鳴瀧、本山)(荒砥、中砥、仕上げ砥)
籐べら
鋸(のこぎり)
鉋(かんな)(平、舟底、竪あるいは立)
鳥居(とりい)・・・弓の矯正器。神社の鳥居に似ることよりこの名あり。
もたせ・・・専門家以外はあまり必要ないが、あれば作業がしやすい。
張り台・・・張り台を備える道場はほとんどないであろう。
張り込み台
しない弦・・・市販されていないので、太めの弦を代用。
仕上げ塗料
側木表面下地塗装を、ゼットシーラー(太洋塗料製建築物外装用アクリル下塗り)にて行い、研ぎ出し作業。中塗り用塗料を数回塗装し、仕上げはウレボン(大谷塗料製木工家具用ウレタン上塗り)にて塗装を行う。仕上げ塗装を行わず、白木でもよいだろう。
2.村の手順
荒村、中村、小村の段階があるが、現在弓具店では荒村、中村をしたものを商品としている。村の手順は以下の通り。
1、畳押し(成りの強弱、出入りの様子を確かめる。裏反りを抜く意味もある。)
畳の上で、藤放しの内竹面を下にし、一人が上弭を畳に押しつけて支える。もう一人が下弭を保持し、ゆっくりと畳に押しつけるよう(藤放しの裏反りをなくす方向)にし、藤放しの形状を見る。これは、裏反りを少しとる目的と藤放しの性を見る(強弱、出入りを確かめる)ために行う。強弱などが見つかれば、それを考慮に入れて、以後の作業を行う。
2、肩を切る(弭を切って作ること)
上下の弭を切りこんで作るのであるが、仕上げは後ほど行うので、太めの荒削りでよい。
3、張り込み(押し張り、台張り)(新張り・・・はじめて弓と言われる)
張り台の使用の仕方・・・弓の少し強い個所には薄い板をかいこむなど工夫が必要。
押し張りの仕方・・・張り台があれば、それを使用すると最も安全に張れるが、ない場合には4人ほどで押し張りを行うと比較的安全である。しない弦を上弭に懸け、内竹と関板の境目辺りを麻の切れ弦にてしない弦が動かぬように(張った時に返らないように)縛る。切れ弦で一度しない弦を結んだ上で弓としない弦の上を数回まわして縛る。上弭を弓張り板に差し込み、「弓師張り」で張る。この時、補助役Aは弓が返らぬよう弓の上部を支えるが、手形が入らないように注意する。補助役Bは経験が豊富な者を必要とし、脇から弓形を見て、押し具合を指示する。補助役Cは下輪を下弭に入れる。この時、張り役の両腕の間に弦があることが大切である。さもなければ、弓をひっくり返す恐れがある。弦がかけられたら、� ��り役はゆっくりとたわみを戻し、「弓は」の高さを確かめ(低くないように)てから弓張り板より外す。この時も両腕でしっかりと弦を挟んで弓が返らないようにする。弓が返らないことが確かめられたら、成りを確かめる。
4、成りを見る
上部を縛ったままで形、出入りを確かめる。「弓は」の高さがどれくらいであるかを考慮に入れて形を確かめる。具合により押すか踏んで形を修正する。形がととのったらそのまま数日張っておく。
5、面取り まず内竹の面をとる
三分の準
小刀、きそげの砥ぎ方、使い方・・・荒砥・中砥で研いで、仕上砥で仕上げる。研ぎ面が丸みをもたないように平面に研ぐ。使用法は、小刀なりきそげを保持し、薬指と中指の間に弓を位置させた状態で削る。さもなければ弓の竹面に傷を付ける恐れがある。
6、鉋かけ 肉置き(ししおき)
7、弭削り 陰陽のばち形 本弭6分・末弭1寸2分(外竹の方にて)
8、出入りの修正
出入りに関する削り方・・・側木の左を削れば左に押され入木に、右側を削れば出木の傾向となる。(要調査) 出る弓は出る弭肩を低く、入る弓は入る肩を低く削る。狂う弓も弭の切り様により矯正できる場合もある。
9、成りの修正
姓netzelはどこからを発信しません鳥居の使い方・・・鳥居の形状をしているのでこの名がある。中央部で出入りを直す。右端の出っ張りで強い部分を弱めることができる。
10、火入れ
火入れの温度・・・火入れを行って成を調える場合、火入れは「人肌」程度と教わったが、経験的に、合成接着剤の場合はもう少し強めにしなければ利かない場合が多い。弓にもよるので、初めは低めで確かめてから、修正できないようであれば再度火入れするのがよいであろう。
11、踏み込み
12、射込み
13、中村
14、射込み
15、小村
16、装束仕上げ
もたせの使い方・・・弓に籐を巻くなど、弓を回転させる作業をするときにもたせに弓をのせると作業がしやすい。裏反りのある弓の作業時には大変便利である。
★豆知識:昔の言葉「他人の弓引くべからず、他人の馬乗るべからず」
★豆知識:8寸(24cm)以下の裏反りにして使用可となる。6寸(18cm)程度が使用しやすい。
★豆知識:昔は、弓勢により京弓、薩摩弓、江戸形、大蔵形、加賀形等があったが現在は弓師による違いの方が大きいようである。
★豆知識:握り皮下に部分に名判を入れる習慣があった。
★豆知識:一般に弓の厚さは矢摺籐の上部で測る。
★豆知識:弓力を落とすために村をする場合があるが、手幅が狭くなりすぎて削れない場合の方法として「しのぎ村」または「しゃくり村」という方法を用いて村をする。
7−2−10 籐の巻き換え方
☆籐の種類
・一文字(鬼籐、中籐、細籐がある。)
・杉成り(上下太さが違う。匂籐のように面がとってある。)
・面取籐(しのぎ)・・厚みがあり、面が取ってあるので上品。上部に皮が残してあるものを甲白という。
・平籐・・・・・・・・薄い皮のもの。
・奴籐・・・・・・・・広く厚い皮のもの。三階籐の矢摺籐に用いる。一文字、鬼籐とも称する。
上質の籐であれば、水につける必要はない。弓具店で使用しているものは水に浸けなくてもよいのではないかと思う。籐が乾燥している場合、又は古い籐をもう一度使用する場合には、塩水または、湯に浸けると籐の癖がとれたり(古い場合)、割れにくく、作業もしやすいものである。
巻き始めの部分を削ぎ厚みと幅を落として薄くし、外竹から巻き始める。1周目は重ねて巻き、以後らせん状に隙間があかないように巻く。一文字は6cm程度、杉成りは9cm程度に外竹側で巻き終える。巻き終わりも薄く削り、籐へら(口入れ)で巻いた籐の下に差し込み固定する。日置流尾州竹林派では三階籐といい、一文字籐を三段に巻くのが慣わしであったが、この巻き方では競技規定に反することになる。伝統が競技規則の制約を受け強制的な変更を強いられるのは残念なことである。
参考:競技では、矢摺籐は籐頭より6cm以上、また目印等がないことが条件とされる。
接着剤は、最初と最後だけつける。そうすると村する時に外しやすい。
また、籐を再利用しやすい。
もたせ(2本の柱間に紐を緩やかに張ったもの。弓は弦を外して作業するため裏反りにより弓を返すことが困難となるので、弓をこの紐にのせて作業すると、弓の返しが容易になり、手元をあまり動かさずに作業できる。)を活用すると作業が楽。
テーピング(指に巻いておくと怪我防止になる。)を活用する。
7−3 弓の種類・用語(参考)
※使用目的等による名称
・的弓・・・にべ弓の時代は、一般には白木だが、夏季には塗弓を使用した。江戸時代 に7尺3寸を標準にした。
・差矢弓・・・堂前用の弓。差矢用の弓。一般には詰めてある。手幅は細い、白木。内竹の節を削り落とす。
・繰矢弓・・・繰矢に使用する弓。
・軍弓・・・用前(戦陣)で用いる塗弓。俗に修羅弓ともいう。
・修羅弓・・・用前(戦陣)で用いる塗弓。軍弓の俗称。
・堂弓・・・京都三十三間堂など堂射に使用する弓(6尺8寸)。内竹の節を削り落とす。
・芝弓・・・堂の裏、芝の上で稽古に用いた弓(7尺)。
・陣弓・・・矢倉弓とも言う。城内に備えておく弓。千段塗、藤巻、塗込の弓などがある。
・矢倉弓・・・陣弓のこと。
・鹿兒弓・・・
・拵弓・・・弓弭に槍の穂先のような小型のものを取り付けた弓。槍としても用いられるようにしたもの。
※装飾等による名称
・一張弓・・・小笠原流の最高位の人に与えられる。重籐の弓の一種。握上36、握下 28の籐を巻く。秘伝では握下27との説あり。
・糸包の弓・・・麻や絹糸で弓を巻き、その上に漆を塗った弓。
・重籐(滋籐)・・・小笠原流、第2階許しの弓。黒塗りの下地に籐を幅3cmくらいずつ2cmくらいの間隔でぎっしり巻いた弓。一張弓とも言う。基本となる籐の他に、握りを中心に上三十六、下二十八(地三十六禽、天二十八宿)の籐を巻く。巻く籐の数にかかわらず、単に籐がたくさん巻かれた弓を称する場合もある。
・負重籐弓・・・握りを中心に上十八、下五の籐を巻く。
・相位弓・・・小笠原流、第3階許しの弓。式の籐のほか、握り上7カ所、握り下5カ所に白籐が巻かれた弓。その他諸説あり。
・修善弓・・・小笠原流、第4階許しの弓。
・白重籐・・・黒塗りの弓に白籐を巻いた弓。
・側黒弓・・・側木のみ黒漆で塗った弓。
・側白木弓・・・内外の竹を黒や朱などに塗り、側木は塗っていない弓。
・尺籐弓・・・1尺ごとに籐が巻かれた弓。
・三所籐弓・・・上下切詰、矢摺りの3個所だけ籐が巻かれた弓。
・七所籐弓・・・7ヶ所に籐が巻かれた弓。
・十所籐弓・・・10ヶ所に籐が巻かれた弓。
・三品籐弓・・・
・塗籠籐弓(しめこ重籐)・・・籐をたくさん巻いて、その上に漆を塗った弓。鏑籐と矢摺籐のみ白籐。
・八張弓・・・太平弓・蛇形弓・羅弓・相位弓・四足弓・陰陽弓・福蔵弓・世平弓の8つの弓の総称。
・笛籐弓・・・
・吹寄籐弓・・・二所籐弓、あるいは相位弓の別名との説もあり。
・節巻弓(節籐弓)・・・節の上を籐で巻いた弓。
・蒔絵弓・・・蒔絵のほどこされた弓。献上用など。
・村削の弓・・・
・村重籐・・・籐の数の定めはないが、数ヶ所にまとめて籐の巻かれた弓。
・本重籐・・・握下28ヶ所、握上2ヶ所に籐の巻かれた弓。
※制作方法等による名称
・丸木弓・・・木を削り、弦を張った弓。原初的、初期の弓。櫛形の弓。「梓」「桑」「櫨」「柘」「檀」等の木を使用。鎌倉時代まで使用されたといわれる。
・伏竹弓・・・丸木弓の外を削って竹を張ったもの。丸木弓から発展的に考案されたもの。平安時代初期にはじまったとされている。
・三枚打弓・・・外、内に竹を張ったもの。丸木弓・伏竹弓から発展的に考案されたもの。
・四方竹弓・・・4面を竹で覆った弓。中央部は木製。
・弓胎弓・真々木弓(麻々木弓)・・・三枚打の中心部にひごを入れたもの。現在使用している弓。
・塗弓・・・漆を塗った弓。戦場に用いるものと稽古に用いるものとがある。白木弓を射込み完全なる弓に糸又は麻を巻き漆で固めて塗弓とした。
・白木弓・・・塗っていない弓。
※その他の特殊な弓
・小弓・・・雀小弓。遊戯化した弓射に用いる。短い弓を使用して的を射、衣服などを賭けて勝負する平安貴族の室外遊戯として行われた。
・楊弓・・・遊戯用の小弓。室町時代の庶民の遊びに使用される弓。室内娯楽の1つで婦人が楽しんだ。江戸時代にも民間で行われた。
・半弓・・・およそ5尺以下の短い弓をいう。
・鯨半弓・・・3、4尺程度の弓で材料に鯨を用いる。
・李満弓・・・籠半弓ともいう。紀州の人、林李満が考案したとされる。2尺程度の鯨半弓に小型の矢を使用するもの。
★豆知識:小笠原流、免許では使用できる弓やゆがけの装飾が変わる(上位より)。
一張弓(いっちょうきゅう)
重籐弓(しげとうきゅう)
相位弓(そういきゅう)
修善弓(しゅぜんきゅう)
また、ゆがけでは、以下のものがある(上位より)。
紫2本継指(中指・薬指が紫色)
紫1本継指(薬指が紫色)
紫紐ゆがけ(紐が紫色)
★豆知識:弓鉾は、足利義満の時、七尺五寸を定法とした。
★豆知識:村準(むらかね)・・・昔は、前竹6分、外竹9分を標準とした。現在の弓を測定してみるとこの村準には沿っていないようだ。
★豆知識:上下鏑籐・・・寸法は上籐三寸六分、下の籐二寸八分。ただし的弓には上の鏑籐九分、下の鏑籐七分。(「大和流天之巻一段第二」)
★豆知識:矢摺籐・・・寸法は三寸二分。ただし一寸六分。(「大和流天之巻一段第二」)
★豆知識:竹弓の製作は、ひご、内竹、外竹、上下の関板を合わせてひもで縛る段階で入木にする。
【メモ】
・弓師広瀬弥一は「京都五条通寺町上ル町に居住せる・・・・」とあり。
(印西流 弓製作●●(むら)之書)
・三輪仁●・・・「享保五年に江戸弓町に・・・」とあり(同上)
あなたはサッカーを行う
・「内竹、外竹は分頃に應じた太さの竹(七分の弓には七寸の竹、六分の弓には六寸の例による)を充分に枯らして割り合せ、・・・・・・下の方から順次上に向つて反を付けながら楔を打つて締め、膠を密着させて二三日放置し、・・・・」「訂正増補 弓道解説」(弓道教育研究会著、西東社、昭和15年)130頁
アーチェリー実施者では多くの選手が矢を自分で製作して使用している。和弓でも海外(欧州など)の弓道家は矢の入手が困難かつ日本よりも高価なため、自分で製作する弓道家も多い。ここでは簡易な方法で矢を製作する方法を説明し、実際に矢を作る体験を通して矢の構造と働きについて理解をしてゆきたいと思う。
アーチェリーの矢作りでは、フレッチャーという道具を用いて矢羽根(ヴェイン)を接着する。このフレッチャーを利用して和弓用矢を製作する方法について述べたいと思う。 アーチェリーでは、矢羽根(ヴェイン)と筈(ノック)の接着にはフレッチタイトと云う接着剤などが使用される。和弓用の矢では、竹矢の場合は企業秘密の膠、最近では木工用ボンドを基に工夫した(薄めた?)接着剤のようである。ジュラルミン、カーボン矢等の場合は木工用ボンドでは剥がれ易く、もう少し強力な接着剤が使用されているが、これも企業秘密であろうか矢師はなかなか教えてくれない。ジュラルミン矢などはボンドG17で接着する場合もあるようだ。
矢羽根を接着する実習ではフレッチタイトの他、色々な接着剤を試してみよう。フレッチタイトは和弓のジュラルミン、カーボン矢などの製作用に用いても矢羽根をしっかりと接着してくれるので使いやすい接着剤である。しかし、シャフトに油分がついている場合には簡単にはがれてしまうことがある。油分をとってから接着する必要がある。フレッチタイトは強力なため、雨に濡れてはがれる事はない。完全接着までには時間がかかるが、場合によりアセトン(有機溶剤)で薄めて使用すると均一できれいに接着できる。なお、フレッチタイトはアーチェリーではノック(筈)の接着にも使用されるが、強力な接着剤なので、筈の交換を考えると和弓の矢筈接着には使用しない方がよいだろう。
伝統的な手法では、羽根を取り付けることを「矧ぐ」と言う。フレッチャー方式のみならず伝統的手法も体験をすると職人(矢師)の技と苦労を知ることができるであろうから是非体験してほしい。
7−8−1 フレッチャー方式による接着実習(現在実施せず)
甲矢、乙矢用羽根を分け、3枚を選択する。
フレッチャーには、羽の取り付け枚数を3枚、4枚、6枚と設定が可能なので、3枚用(120度)に設定する。
筈の付けられたシャフトを筈受け軸に固定する。
クランプ(羽を挟み込むクリップ)で矢羽根を挟み、羽根軸に接着剤を塗る。
クランプのマグネット部を台座に固定する。
クランプをシャフトの方へ少しずつ押し、羽根軸がシャフトの所定の位置に接着できるように慎重に押し当てる。
矢羽の取り付け角度(ピッチ)が一定になるように接着する必要がある。
5分ほどそのままに固定し、接着されたら、2、3枚目も同様に接着する。
固定された羽根軸の上下、それぞれ1〜2cm程度羽の茎を残し、この上を絹糸(9番)で羽のある方から巻き、固定する。筈巻きも同時に筈の方から巻く。
糸を巻くときはシャフトを帯又はベルトに差し込んで作業をするとシャフトが安定して糸が巻きやすく、腕も疲れない。
巻いた糸の上に、糸かためを施し、木工用の接着剤をコーティング用として塗る。
コーティングは2〜3回程度繰り返すときれいに仕上がる。
巻いた糸の部分を「矧ぎ」と言う。
鏃に近い方が本矧(モトハギ)、筈の方が末矧(ウラハギ)である。
糸の上をラッカー等で2〜3度塗る。
矧ぎ、筈巻きの端などをカシューで毛引き(鳥の羽1本に塗料をつけ巻き付けるようにしてラインを引く)すると矧ぎが引き立ち、見栄えがよくなる。
毛引きにはしなやかな羽根1本を使用するとよい。
弓を引くにあたり、右手の親指を痛めないよう保護する鹿革製の手袋状のものを「ゆがけ」という。ゆがけは湿気を嫌うので、内に下掛け(汚れ防止、汗吸収用)をつける。夏は特に、下掛けをこまめに取り替えるのが望ましい。
7−9−1 ゆがけの種類
革の種類
小鹿(ことう) ・・・肌理の細かい、最上の鹿革。
子供の鹿のため、革の表面積も少なく、高価となる。
中鹿(ちゅうとう)・・・小鹿と大鹿の中間。
大鹿(おおとう) ・・・老鹿の革で、肌理は荒く、傷も多い(角などによる傷)。
価格は小鹿・中鹿よりは安価となる。
ゆがけの形状種類
柔帽子‥‥親指、人差し指、中指を保護し、親指の内側は革を重ねて厚くしてある。矢を保持する感触が伝わりやすいので初心者でも比較的早く矢の扱いに慣れることができる。本来戦場では弓も引けば刀も使うという状況であったわけで、指の自由を損なわないようなゆがけでなければならなかったのだ。現在でも敵前射術(戦場での弓射技術)を稽古するときは、柔帽子のゆがけを使用する。一具ゆがけというものは、左右とともに使用する手袋状のもので、諸ゆがけと同様で全指が革で覆われ、親指は柔らかいものをいう。右手の親指腹に1枚だけ皮が重ねてある。一具とは一揃いの意味である。流鏑馬に使用される騎射ゆがけも両手に使用し、歩射用のものとは少し異なるようである。
堅帽子‥‥・三つゆがけ(親指、人差し指、中指)
・四つゆがけ(親指、人差し指、中指、薬指)
・諸(もろ)ゆがけ(全指)
堅帽子のゆがけは、いずれも親指に角や木などが使用され、強い弓でも指が痛まないようにしてある。三つゆがけは歩射(的前)専用のゆがけで、的前では三つゆがけが合理的である。本来は、四つゆがけは堂射(三十三間堂の通し矢)に使用され、長時間強い弓を引く目的のものであった。通し矢と的前の射術は大きく異なるので現在の四つゆがけは的前用に改良されたものである。諸ゆがけは騎射(馬の上での射法)や儀礼用に使用され、3つゆがけと同様の使用方法をしていたが、現在は的前用に改良されて、3つゆがけ方式、4つゆがけ方式、双方とも的前でも使用している人もいる。
押手ゆがけ‥‥的前では、本来は用いないのが礼とされる。江戸徳川幕府時代には、上覧の射には使用を禁止されていたようである。堂射などでは押手を痛めないために使用していたが、中指、薬指、小指の付け根に滑り止め用の皮帯がつけられていた。現在の的前でも特別な事情のないかぎり用いない方がよい。
★豆知識:一般的にはゆがけの緒は手首内側で結ぶ。流派により違いがある。
日置流の結び方は手首内側で、五角形になるように結ぶ。
7−9−2 ゆがけの選び方について
まずは、目的の射法(歩射、的前)に合ったゆがけを選ぶ必要がある。ゆがけを購入するには手形をとって注文すれば、自分の手にあったものを得られるが、高価となる。既製品の中から選び、購入する時は、3指ともにぴったりするかどうか調べ、特に親指の大きさは重要なので優先させて、しっかり確かめる。外見上は親指の向きに注意し、下を向いたものは避ける。特定の流派を学んでいる場合には、その流派の引き方に合ったものを選んだ方がよいだろう。例えば、日置流印西派の射術を学んでいる場合には、「日置流印西派の一文字ゆがけ」と学ぶ流派名やゆがけの特徴を言って注文するのもよいだろう。ゆがけは射術に大いに影響するので、予算と相談しながら自分の手に合ったよいものを選ぼう。継続して弓道を修練す� ��意志のあるものは備えの借り物ではなく個人持ちとすることが必須である。弓道授業や弓道教室などで備えのものを使用する場合は、いつも同じものを使用しよう。射術面からは共用は避け、同一のものを使用して慣れた方が上達は早い。
7−9−3 新しいゆがけを使用する時の注意点
革の堅い新しいゆがけは手に馴染まず、他の弓具と比べて、使い慣れるまでにたいへん時間がかかるのが常である。したがって頻繁に取り替えたりすべきものではなく、長年にわたり補修しながらでも大事に使用すべき弓具である。よいゆがけを選んで、使い慣れることが大切だが、せっかくよいゆがけを購入したとしても、使い初めの扱い方を誤るとゆがけの性能を著しく損なうので、次の点に注意し、大切に扱おう。
@ゆがけの帽子(親指)の付け根が折れてガクガクになると軽い離れは望めず、ゆがけの価値を損なうので、帽子の付け根(「腰」と言う)が折れないように注意しながら使用する。付け根(腰)の部分は帽子の木部(又は角)の端にあたるため、適切な方法で使用しなければ、たいへん折れやすいのだ。一の腰が頑丈に作られたゆがけもあるが、これは堂射(三十三間堂通し矢)用ゆがけの名残で、的前には必要以上な頑丈さは不要である。大事な部分である付け根(腰)を折らないためには二の腰から一の腰にかけて全体を柔らかくする。柔らかくすることにより、ゆがけの帽子にかかった力を1点で受けるのではなく分散することができる。(やり方の詳細は、指導者より指導を受けてほしい。)
Aゆがけをつける("ゆがけをさす"ともいう)時は、取り懸けの形をつくり、一の腰と手首の間にできたすき間を維持して小紐と緒を巻く。すき間を維持しないできつく巻くと、帽子の付け根が折れやすくなる。行射の時、抜けそうな感じになる場合があるかも知れないが、二の腰が十分に柔らかくなるまでは、止む終えないのでそのままで使用する。
B練習の合間には二の腰を充分もみほぐす。その具合によって少しずつひもを締めて使用するが、決して先を急がないようにしよう。(ゆがけの具合やもみほぐし具合にもよるが正規の締め具合にするまでには、数か月〜1年位の時間をかける。)
Cゆがけ使用後は、風通しの良いところで陰干しで乾燥させる。水分を吸った革が乾燥すると堅くなるので、汗などで湿りやすい場合は下ゆがけを頻繁に取り替え、ゆがけに湿気を与えないような配慮が必要である。特に夏場は注意が必要であろう。乾燥剤を入れた缶やプラスチックケースに収納する人もいる。大切にする心がけとしては良いが、乾燥剤が革質へ及ぼす影響も考えられるので、最低限乾燥剤が直接革に触れないように心がけたい。革質の変化の有無に関する研究は報告されていないので、研究が待たれるところである。ゆがけの湿気防止のため、道場の収納庫に除湿器を入れてそこにゆがけを収納している所もある。
7−9−4 ゆがけの製作・修理法について
・製作の順序
1,採寸
2,型紙おこし
3,墨入れ
4,裁断
5,縫い合わせ
6,伸ばし。整形
7,鏝あて(熱加工)
8,控え・紐付け
9,最終調整
・修理法
接着剤は飯糊(ご飯粒をねったもの)を使用する。木工用接着剤で代用してもよいだろう。瞬間接着剤はその後の補修が難しくなるので望ましくはないが、容易に修理できるという利点もある。2液混合型のエポキシ系樹脂も弦溝など容易に成型できるので便利である。
修理法の詳細は指導者に直接指導を受ける必要がある。簡易な修理は自分でできるようにしたい。しかし、射手の修理は職人には嫌われる傾向がある。
弦は天然の麻や化学繊維のものがある。価格と耐久性から化学繊維製品の使用が増えている。弓の長さにより、寸詰まり弦、並弦、伸弦などがある。
弦の太さ・重さについては、普通は、弱い弓には細く、軽い弦を、強い弓には太く重い弦が原則だが、弦の選択は各射手の好みにもよる。早く切れ過ぎれば重い弦を、切れなければ、または冴えなければ軽い弦がよいと考えられる。弦の重さが少し変われば弓の調子も変わるものだが、上級者であれば、しばらくその弦に慣れれば、的中の差はほとんどないようである。慣れれば的中面でほとんど差はないのだが、弦の選択は「冴え」という面からの選択が主となるかと思う。上達したら、自分の弓と技に合ったものを探すのも楽しみの一つとなるだろう。また、竹弓に麻弦を使うことは、弦音(弦と弓が強く接触するときの音色)もよく、趣のあるものである。好みやこだわりをもって使用している弓道家もたくさんいる。良い弦音� ��音波形とコオロギの鳴き声の音波形は似ていると聞く。
参考のため、古来の弦の種類・名称をあげる。
・塗弦・・・和紙を巻いてその上を漆で塗った弦。
・白弦・・・塗り弦に対する言葉で、通常の弦。
・禦弦(せきづる)・・・軍用の弦で、糸や麻で弦の上を巻いて、漆をかけたもの。
・関弦・・・伊勢国関産の弦をいう。
・坂弦・・・生産地による名称。
『訂正増補 弓道解説』によれば、6分の弓で弦の目方1匁7分を標準とすることが記載されている(注:弓の分2厘増すごとに弦1分増し。新弓の射込み弦は標準の1匁増し。)(「訂正増補 弓道解説」弓道教育研究会著 西東社 昭和15年 148頁。)が、6分の弓のkg数がわからないが、現状はもっと重めの弦を使用しているであろう。
弓道教本の第1巻186頁には、弓の力が22〜23kg位であれば、弦は7グラム(約1匁8分)ないし7.5グラム(2匁)とある。また、以下の関根の資料、浦上(1984)での記述も参考に、個人に応じて決定すればよいであろう。
弓の強さ 弦の目方
16kg・・・1匁7分前後
20kg・・・1匁9分前後
22kg〜23kg・・・2匁前後
(関根令夫の資料より)
弓の強さ 弦の目方
15〜16kgまで・・・1.8匁以下
16〜20kg・・・1.8〜2匁
20kg以上・・・2匁またはそれ以上
(浦上博子『初心者のための弓道』より)
7−10−2 弦輪の作り方
市販の弦は下輪は完成されており、上輪を自分で作って弓に合わせるようにする。輪の結び方には一重結びと二重結びがあり、市販の下輪は二重結びとしてある。一重結びは簡略な方法で、弦輪のずれを少なくするためには二重結びを用いる方がよいだろう。作る際にはしっかりと締めて作らなければならない。締まりがないと伸びやすく、頻繁に作り直すことは弦の寿命も短くする。また、弦輪は自己の弓弭に合わせて作ることが大切で、大き過ぎた場合には弦は伸びやすく、弓がひっくり返る原因にもなる。小さすぎる場合には弦輪が切れやすくなる。
上輪を作る位置を決めるには下輪を末弭にかけ、弦を弓に沿わし長さをはかり、本弭の三つ角から指四本分の位置が大凡の位置である。しかし、弓により、また各人の計り方の個性差により微妙な違いがあるだろうから、自分で慣れて感覚をつかもう。
7−10−3 中仕掛けの作り方
弦の矢筈を番える部分は、矢筈の溝のサイズに合わせて太くする必要がある。その部分を中仕掛けと言うが、長さは9〜10cm程度になるように仕上げれば良いだろう。矢を番える位置より1〜2cm位上からくすね又は木工用接着剤を塗り、おぐす(仕掛麻)20〜25cmの両端をナイフなどで細くする。そのおぐすを弦の向こう側に位置させ、右に5cm程度を出し、弦の縒りと反対(上から見て時計回り)に巻き下ろす。左の残りの麻を弦の縒りと同方向(反時計回り)に巻き下ろす。最後に、道宝という拍子木のようなものを使用して、中仕掛けを締めるようにこき下ろす。弦の縒りと同方向にこき下ろす。
中仕掛けの太さは自分の矢筈に合うように作ろう。使用して毛羽立ってきたら、麻くすねをかけたり、接着剤を付けて早めに補修したりしよう。
7−10−4 麻弦作りの行程
麻こき・・・麻を縦横に揉み、柔らかくする。竹で麻を挟みのばす。
麻緒作り・・・輪に作りおく。
麻より・・・麻緒を継ぎながらよる。
張り込み・・・よった麻を水に浸し、手のひらで2回よりをかけて張り込む。
水こき・・・タオルなどで行う。たくさん行った方がよい。
よりかけ・・・約12本ほどの水こきを終えて(15分〜30分経過して)から5回よりをかける。約3cm程度短くなる。
(天気のよくない日は30分くらいおいてからよりをかける)
けば取り
水こき(けばを取った後、再び水こきをかける)
*(ここでくすねをひく場合もあり)
よりかけ・・・手のひらにて3回よりをかける。
くすね引き・・・くすねを引きタオルでならす。くすねが弦に少ししみこむ程度。
よりかけ・・・最後に1回、手のひらにてよりをかける。
乾燥・・・乾燥時間は、天気による(好天時1日、雨天時3日程度)。
下弦輪作り・・・くすねを引き、中仕掛けを作る要領で下輪となる部分に麻緒を巻き布を着せ、下輪を作る。
上弦輪作り・・・くすねを引き、中仕掛けを作る要領で上輪となる部分に麻緒を巻き布を着せ、約20cmに仕上げる。
仕上げ・・・全体を輪に拵え、製品として仕上げる。
以上の段階がある。麻よりと張り込みの加減が素人では難しく、試行錯誤によって体得するしかない。麻は栃木産のものが最良といわれる。品質表示で、○印の中に「甲」の字が書かれた通称「マルコウ」というものが高品質の良いもの。弦製作のためにはその中でも更に良いものを選ぶことが望ましい。
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